その通説って本当?
「子どもを正しく導くためには、時には体罰も必要だ」という考え方は、古くから議論されてきました。
しつけとしての体罰は、子どもの成長にどのような影響を与えるのでしょうか。
通説が広まった背景
体罰は長年、家庭や学校でのしつけの一環として行われてきました。しかし、近年の研究では、幼少期の厳しい経験が大人になってからの慢性的な痛みや健康問題と関連していることが指摘されています1。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Visserら(2022)2 | 学校での体罰と子どもの発達に関する21件の研究を複数の研究をまとめた分析 | 体罰は子どもの攻撃的な行動や心の不調と関連し、成績低下とも結びついていた | 体罰は子どもの発達にとってリスク要因であることを示している |
| Gershoffら(2016)3 | 体罰に関する111件の分析結果を統合 | 体罰と子どもの有害な結果との間に一貫した関連が確認された | 体罰は虐待と区別できないほど有害な影響を及ぼす可能性がある |
| Larzelereら(2018)4 | 体罰の影響を調べるための分析手法を比較検討 | 分析方法を変えると、体罰によるリスクが小さく見える場合もあった | 分析の前提条件によって結果が左右されるため、因果関係の判断には注意が必要 |
| Gershoff(2002)5 | 親による体罰と子どもの行動に関する複数の研究を統合 | 体罰は子どもの攻撃性を高め、心の健康を損なうことと関連していた | 体罰は子どもの行動改善にはつながらず、むしろ悪影響を及ぼす可能性が高い |
多くの研究をまとめた結果、体罰は子どもの攻撃的な行動や心の不調と関連していることが確認されています25。また、体罰が子どもの成績低下を招くという結果も報告されており、体罰が子どもの成長に良い影響を与えるという証拠は見当たりません2。
体罰と虐待を分けて考えるべきだという意見もありますが、研究データを統合すると、体罰は虐待と同様に子どもの発達にとって有害な結果と結びついていることが示されています3。
一方で、分析の手法によっては体罰の影響が小さく見える場合もあります4。これは、体罰そのものが原因なのか、家庭環境などの他の要因が影響しているのかを切り分けるのが難しいためです。そのため、体罰がしつけとして有効であると断定することはできません。
研究全体の動向
体罰が子どもの発達に悪影響を及ぼすという結果は多くの研究で一貫していますが、分析手法による結果の揺らぎも無視できません234。体罰が子どもの行動を改善するという明確な証拠はなく、むしろリスクを高める可能性が示されています5。
留意点
- これらの研究は主に海外のデータを基にしており、日本の子育て環境にそのまま当てはまるとは限りません。
- 研究結果は集団の傾向を示すものであり、個々の子どもに必ず同じことが起きるわけではありません。
- 体罰と子どもの行動の関連は、家庭環境や親子の関係性など、他の要因が複雑に絡み合っている可能性があります。
- 分析手法によって結果が異なる場合があるため、一つの研究結果だけで判断せず、全体的な傾向を捉えることが重要です。
結論
体罰がしつけとして有効であるという科学的な根拠は確認されていません。むしろ、体罰は子どもの攻撃的な行動や心の不調、成績低下といった有害な結果と関連していることが多くの研究で示されています235。
引用元
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André E Bussières, Mark J. Hancock, A. Elklit, Manuela L. Ferreira, P. Ferreira, Laura S Stone, et al. (2023). Adverse childhood experience is associated with an increased risk of reporting chronic pain in adulthood: a stystematic review and meta-analysis. European Journal of Psychotraumatology. ↩
-
Lotte N. Visser, C. E. van der Put, M. Assink (2022). The Association between School Corporal Punishment and Child Developmental Outcomes: A Meta-Analytic Review. Children. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
Elizabeth T Gershoff, Andrew Grogan-Kaylor (2016). Spanking and child outcomes: Old controversies and new meta-analyses.. Journal of family psychology : JFP : journal of the Division of Family Psychology of the American Psychological Association (Division 43). ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Robert E Larzelere, Marjorie Lindner Gunnoe, Christopher J Ferguson (2018). Improving Causal Inferences in Meta-analyses of Longitudinal Studies: Spanking as an Illustration.. Child development. ↩ ↩2 ↩3
-
Elizabeth Thompson Gershoff (2002). Corporal punishment by parents and associated child behaviors and experiences: a meta-analytic and theoretical review.. Psychological bulletin. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。