その通説って本当?
「選べるものが多すぎると、かえって何も選べなくなる」という話を耳にしたことはないでしょうか。これは、選択肢が多すぎると脳が処理しきれず、判断能力が低下するという考え方に基づいています。
しかし、本当に選択肢の多さだけが原因で決断ができなくなるのでしょうか。
通説が広まった背景
選択肢が多すぎると満足度が下がるという考えは、マーケティングや心理学の分野で長く議論されてきました。しかし、近年の研究では、単に選択肢の数だけでなく、その人が「最善の選択」をどれほど強く求めているかという性格的な傾向や、置かれている環境が重要視されています12。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Geら(2025)1 | 中国のネット通販サイトの利用記録を分析し、多くの選択肢を比較検討する傾向がある人とそうでない人を比較しました。 | 多くの選択肢を検討する人は、途中で買い物をやめたり、購入後に後悔したり、一度決めたことを取り消したりする割合が高いことが分かりました。 | 選択肢の多さは、最善を求める性格の人にとって決断の負担になりやすいことを示しています。 |
| Finkelsteinら(2019)3 | 実験参加者に、自分自身の人間関係に不安を感じさせる状況を作り、その後のスナック菓子の選び方を観察しました。 | 人間関係に不安を感じている人は、選択肢の多さにかかわらず、新しいものを試すよりも、あえて選択の幅を狭める傾向が見られました。 | 選択肢の多さよりも、その時の心理状態が選び方に影響を与える可能性があることを示しています。 |
| Yangら(2024)2 | 時間がないというプレッシャーがある状況で、人がどのように選択肢を検討するかを実験で調べました。 | 時間的な制限がある場合、個人の性格やその時の感情の状態によって、選択肢をどう扱うかが変化することが確認されました。 | 選択肢の多さだけでなく、時間的な余裕の有無が判断の仕方を左右することを示しています。 |
研究結果を見ると、選択肢の多さが決断を妨げるという現象は、すべての人に同じように起こるわけではないことが分かります。特に、すべての選択肢を比較して「最も良いもの」を選ぼうとする傾向が強い人は、選択肢が多いほど決断のプロセスで疲れ果て、最終的に何も選ばなかったり、選んだ後に後悔したりする可能性が高まります1。
一方で、選択肢の多さよりも、その時の心理的な余裕や環境が判断を左右するケースも確認されています。例えば、人間関係に不安を感じているときは、新しい選択肢を探索する意欲が低下し、あえて選択の幅を狭める行動をとることがあります3。また、時間に追われている状況では、選択肢の数そのものよりも、時間制限という外部要因が判断の仕方に強く影響します2。
これらのことから、選択肢の多さが決断を難しくするという現象は、個人の性格やその時の状況が複雑に絡み合って生まれるものだと言えます。選択肢が多いこと自体が必ずしも悪い結果を招くわけではなく、どのような心持ちで、どのような状況で選ぶかが重要です。
研究全体の動向
選択肢の多さが決断を妨げるという説は、個人の性格や状況によって結果が大きく異なることが示されています。現時点では、特定の性格傾向を持つ人や、特定の心理状態にある人が、選択肢の多さによって決断に苦労しやすいという限定的な理解が妥当です132。
留意点
- これらの研究は特定の状況や性格を対象としており、すべての買い物や決断にそのまま当てはまるとは限りません。
- 「選択肢が多いと決められない」という現象は、個人の性格傾向(最善を求めるか、満足できるものを選ぶか)に大きく依存します。
- 実験環境での結果は、実際の生活における複雑な決断とは異なる場合があります。
- 日本人の消費行動や文化的な背景が、これらの研究結果と異なる可能性を考慮する必要があります。
結論
選択肢の多さが一律に決断を妨げるという証拠はありません。多くの選択肢を吟味する性格の人は、選択肢が多いほど決断に苦労する傾向がありますが、その時の心理状態や時間的な余裕によっても判断は変わります132。
引用元
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Xiaoyu Ge, Xiaomeng Zhang, Qianyi Li et al. (2025). Maximizers Abandon More Before Decisions, Regret More After Decisions, and Re-Maximize More for Second-Time Decisions: Real-World Analysis of Online Consumer Behaviors.. Maximizers Abandon More Before Decisions, Regret More After Decisions, and Re-Maximize More for Second-Time Decisions: Real-World Analysis of Online Consumer Behaviors. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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Yi-Weng Yang, Jia Liu, Yi Wang (2024). Consumers’ variety-seeking behaviors under time pressure: Based on regulatory focus and excitement levels.. PsyCh journal. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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Stacey R Finkelstein, Xiaomeng Xu, Paul M Connell (2019). When variety is not the spice of life: The influence of perceived relational self-threat on variety seeking in snack choices.. Appetite. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。