その通説って本当?

「二つの言語を話す子どもは、そうでない子どもよりも頭の働きが優れている」という話を耳にすることがあります。複数の言葉を使い分ける経験が、脳を鍛えるという考え方です。

しかし、この説は本当に正しいのでしょうか。

通説が広まった背景

二つの言語を話すことが、注意をコントロールする力や、一つのことに集中する力に良い影響を与えるという主張は、長年議論されてきました。しかし、最近の研究では、こうした効果が必ずしも再現できないという指摘が増えています12

検証エビデンス

研究対象・方法主な結果この通説への意味
van den Noortら(2019)1過去の46の研究をまとめて分析約半数は効果があるとしたが、約3割は結果が分かれ、約2割は効果を否定した効果があるとは一概に言えないことを示している
Planckaertら(2023)212歳以下の子どもを対象とした過去の研究を整理二つの言語を話すことによる考える力の向上は、研究によって結果が一致しない子どもの発達段階における効果は確実ではない
Blomら(2024)35〜8歳の子どもを追跡調査言葉の混ざり方には、言葉を使いこなす力や発達の状況が強く影響し、考える力の影響は限定的だった考える力よりも言語能力の影響が大きいことを示唆

過去の研究をまとめて分析した調査では、二つの言語を話すことが考える力に良い影響を与えるという結果が約半分で見られました1。しかし、残りの半分は結果が分かれるか、あるいは効果を否定するものでした1

12歳以下の子どもを対象とした別の調査でも、同様に結果が一致していません2。研究によって、どのようなテストを使ったかや、参加者の選び方が異なることが、結果のばらつきにつながっていると考えられます12

また、子どもが言葉を混ぜて話す現象を調べた研究では、考える力よりも、その子がどれだけ言葉を使いこなせているかという能力の方が、結果に強く関わっていることが分かりました3

研究全体の動向

二つの言語を話すことが、子どもの考える力を全般的に高めると断言できる証拠はまだありません。研究によって結果が大きく異なるため、個人の能力や環境など、他の要素が複雑に関わっていると考えられます123

留意点

  • 研究によって結果が分かれており、すべての子どもに同じ効果があるわけではありません。
  • テストの種類や参加者の条件によって結果が変わるため、一つの研究結果だけで判断するのは危険です。
  • 言葉を使いこなす力や、その子が育つ環境が結果に影響している可能性があります。
  • この結果は特定の集団を調べたものであり、すべての子どもにそのまま当てはまるわけではありません。

結論

二つの言語を話すことが、子どもの考える力を確実に高めるとは言えません。効果が確認されたとする研究がある一方で、効果が見られないとする研究も多く存在するためです12。言葉を使いこなす力や個人の特性など、他の要素が結果に影響している可能性が高く、現時点では一貫した結論は出ていません13

引用元

  1. van den Noort, M., Struys, E., Bosch, P., et al. (2019). Does the Bilingual Advantage in Cognitive Control Exist and If So, What Are Its Modulating Factors? A Systematic Review. Behavioral Sciences (Basel, Switzerland). 2 3 4 5 6 7 8

  2. Planckaert, N., Duyck, W., & Woumans, E. (2023). Is there a cognitive advantage in inhibition and switching for bilingual children? A systematic review. Frontiers in Psychology. 2 3 4 5 6

  3. Blom, E., Yazici, G., Boerma, T., et al. (2024). A longitudinal study of Turkish-Dutch children’s language mixing in single-language settings: Language status, language proficiency, cognitive control and developmental language disorder. Cognitive Development. 2 3 4

※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。