その通説って本当?
「母乳で育てると頭が良くなる」という話は、子育て中の親にとって関心の高い話題です。母乳には赤ちゃんの成長に必要な栄養が含まれており、健康面での利点は広く認められています。
しかし、母乳育児と子どもの知能(IQ)の高さが一緒に見られる場合、それが本当に母乳の効果なのか、それとも親の生活環境や教育への関心の高さが影響しているのかを区別する必要があります。
通説が広まった背景
母乳育児が子どもの知能発達に良い影響を与えるという考えは、長年多くの国で支持されてきました。しかし、所得水準が高い地域では、母乳育児を選択する家庭の経済状況や教育水準が平均より高い傾向があり、知能の差が母乳によるものか、家庭環境によるものかを判断することが難しいという指摘があります1。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Mohammedら (2022)1 | サハラ以南のアフリカで母乳育児と知能の関係を調べた17の研究を分析 | 母乳育児と知能の関連は、家庭の経済状況に左右されない地域でも一貫した結果とは言えなかった | 母乳の効果は環境要因に隠れている可能性がある |
| Lapidaireら (2022)2 | 未熟児を対象に、母乳または人工乳を与えて7歳から30歳まで追跡調査 | 母乳は感染症のリスクを下げ、それが間接的に知能の発達を助けていた | 母乳の直接的な効果というより、病気予防による間接的な影響が考えられる |
| Plunkettら (2021)3 | 772組の母子を対象に、母乳育児の期間と5歳時点の知能を調査 | 母乳育児の有無や期間と、知能の低さに関連は見られなかった | 母乳育児が知能を直接的に高めるという明確な証拠は得られなかった |
母乳育児と知能の関係については、研究によって結果が分かれています。一部の研究では、母乳育児をしていた子どもの方が知能テストの点数が高い傾向が見られますが、これは親の教育水準や家庭の経済的な余裕が影響している可能性が高いとされています1。
一方で、未熟児を対象とした研究では、母乳が重い感染症を防ぐことで、結果として脳の発達を助けているという仕組みが示されています2。これは母乳そのものが知能を直接的に高めるというより、病気を防ぐことで発達の遅れを避けているという考え方です。
また、母乳育児の期間と知能の関連を調べた別の研究では、母乳を飲んだ期間が長くても、必ずしも知能テストの点数が高くなるわけではないという結果も報告されています3。これらのことから、母乳育児だけで子どもの知能が劇的に変わると考えるのは難しいと言えます。
研究全体の動向
母乳育児が子どもの健康に良いことは多くの研究で確認されていますが、知能への直接的な効果については、家庭環境などの影響を完全に取り除くことが難しく、結論を出すには至っていません13。母乳が感染症を防ぐことで発達を助けるという間接的な役割については、特に未熟児において一定の根拠があります2。
留意点
- 研究の多くは特定の地域や条件で行われており、すべての家庭にそのまま当てはまるとは限りません。
- 知能は遺伝や家庭環境、教育など多くの要素が複雑に絡み合って決まるものです。
- 母乳育児ができない場合でも、それが子どもの知能発達に悪影響を与えるという根拠にはなりません。
- この検証は母乳育児の健康上の利点を否定するものではありません。
結論
母乳育児が子どもの知能を直接的に高めるという明確な証拠は、現時点では確認されていません3。母乳には感染症を防ぐなどの健康上の利点があり、それが間接的に発達を助ける可能性はありますが2、知能の差は家庭環境や親の関わり方など、他の要因が大きく影響していると考えられます1。
引用元
-
Shamsudeen Mohammed, Laura L Oakley, Milly Marston, Judith R Glynn, Clara Calvert (2022). The association of breastfeeding with cognitive development and educational achievement in sub-Saharan Africa: A systematic review.. Journal of global health. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
Winok Lapidaire, Alan Lucas, Jonathan D Clayden, Chris Clark, Mary S Fewtrell (2022). Human milk feeding and cognitive outcome in preterm infants: the role of infection and NEC reduction.. Pediatric research. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Beth A Plunkett, Lisa Mele, Brian M Casey, Michael W Varner, Yoram Sorokin, Uma M Reddy, et al. (2021). Association of Breastfeeding and Child IQ Score at Age 5 Years.. Obstetrics and gynecology. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。