その通説って本当?
「脳トレ」をすれば頭が良くなる、あるいは認知機能の低下を防げるという話を耳にすることがあります。パズルや計算、あるいは運動を組み合わせたプログラムなど、様々な方法が提案されています。
しかし、こうしたトレーニングが実際にどれほどの効果を持つのか、また誰にでも同じように効くのかについては、慎重に考える必要があります。研究データをもとに、どのような場合に効果が確認されているのかを分けて考える必要があります。
通説が広まった背景
脳の神経回路が変化する「神経可塑性」という性質に着目し、運動や認知的な刺激が脳の機能維持に役立つのではないかという仮説のもと、多くの研究が行われてきました12。特に高齢化社会において、認知機能の低下をいかに防ぐかは重要な課題となっています。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Johanssonら(2023)3 | パーキンソン病患者597人を対象に、体と頭を同時に使うトレーニングの効果を分析しました。 | 歩行速度や歩幅など、二つのことを同時に行う能力が改善しました。 | 特定の疾患を持つ人には、複合的なトレーニングが有効である可能性を示しています。 |
| Paggettiら(2024)4 | 認知症の人を対象に、認知機能を刺激する様々なプログラムの効果をまとめました。 | グループや個人で行う認知トレーニングが、認知機能の維持に役立つことが確認されました。 | 認知症の症状がある人にとって、認知機能の維持につながる選択肢となり得ます。 |
| Montero-Odassoら(2023)5 | 認知機能が低下し始めた高齢者175人を対象に、運動と脳トレを組み合わせた20週間のプログラムを実施しました。 | 運動のみを行う場合よりも、脳トレを組み合わせた方が認知機能の改善効果が高く、1年後も維持されました。 | 高齢者の認知機能低下に対して、複合的な介入が有効であることを示しています。 |
| Meshkatら(2024)6 | 健康な人や精神疾患を持つ人を対象に、特定の物質を用いた研究を含む認知機能への影響を調べました。 | 健康な人では全体的な認知機能に大きな変化は見られず、結果は一定ではありませんでした。 | 健康な人に対して、トレーニングや介入が必ずしも認知機能の向上をもたらすわけではないことを示唆します。 |
研究結果を見ると、認知機能の低下が見られる高齢者やパーキンソン病患者など、特定の状況にある人に対しては、運動と脳トレを組み合わせたプログラムが有効であるという報告が複数あります35。特に、体と頭を同時に使うような複合的な方法が、単独の運動よりも効果的であるという結果も出ています5。
一方で、健康な人や他の疾患を持つ人については、結果が必ずしも一致していません76。例えば、健康な人を対象とした研究では、認知機能に目立った変化が見られないケースも報告されており、トレーニングの種類や強度によって効果が左右されることが分かります76。
このように、トレーニングの効果は「誰が」「どのような方法で」行うかによって大きく異なります。全ての脳トレが万能であるというわけではなく、対象者の状態に応じた適切なプログラムを選択することが重要です。
研究全体の動向
認知機能の低下がある人に対しては、運動と脳トレを組み合わせた介入が効果的であるという報告が積み重なっています345。しかし、健康な人を含めた幅広い層に対して、どのような脳トレがどの程度有効かという点については、まだ結論が出ていない部分が多くあります76。
留意点
- 研究結果は特定の疾患や年齢層を対象としたものが多く、健康な若年層にそのまま当てはまるとは限りません。
- 「脳トレ」と一口に言ってもその内容は様々であり、すべてのアプリやプログラムに同じ効果があるわけではありません。
- 認知機能の低下を感じる場合は、トレーニングに頼りすぎず、まずは専門の医療機関へ相談してください。
- 研究で示された効果は、あくまで集団としての平均的な傾向であり、個人の結果を保証するものではありません。
結論
認知機能の低下がある高齢者やパーキンソン病患者など、特定の対象においては、運動と脳トレを組み合わせたトレーニングが認知機能の維持や改善に役立つことが確認されています35。しかし、健康な人を含めたすべての人に同様の効果があるとは言えず、効果の有無は対象者の状態やトレーニングの内容に大きく依存します76。
引用元
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M. S. de Sousa Fernandes, Tayrine Figueira Ordônio, G. Santos, L. E. R. Santos, C. Calazans, D. A. Gomes, et al. (2020). Effects of Physical Exercise on Neuroplasticity and Brain Function: A Systematic Review in Human and Animal Studies. Neural plasticity. ↩
-
L. Teixeira-Machado, R. Arida, J. de Jesus Mari (2019). Dance for neuroplasticity: A descriptive systematic review. Neuroscience and biobehavioral reviews. ↩
-
Hanna Johansson, Ann-Kristin Folkerts, Ida Hammarström, E. Kalbe, Breiffni Leavy (2023). Effects of motor–cognitive training on dual-task performance in people with Parkinson’s disease: a systematic review and meta-analysis. Journal of neurology. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
A. Paggetti, Y. Druda, F. Sciancalepore, F. Della Gatta, A. Ancidoni, N. Locuratolo, et al. (2024). The efficacy of cognitive stimulation, cognitive training, and cognitive rehabilitation for people living with dementia: a systematic review and meta-analysis. GeroScience. ↩ ↩2
-
M. Montero‐Odasso, G. Zou, M. Speechley, Q. Almeida, T. Liu-Ambrose, L. Middleton, et al. (2023). Effects of Exercise Alone or Combined With Cognitive Training and Vitamin D Supplementation to Improve Cognition in Adults With Mild Cognitive Impairment. JAMA network open. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
Shakila Meshkat, T. J. Tello-Gerez, Fatemeh Gholaminezhad, B. Dunkley, A. Reichelt, D. Erritzoe, et al. (2024). Impact of psilocybin on cognitive function: A systematic review. Psychiatry and clinical neurosciences. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
T. Hortobágyi, T. Větrovský, G. Balbim, Nárlon Cássio Boa Sorte Silva, A. Manca, F. Deriu, et al. (2022). The Impact of Aerobic and Resistance Training Intensity on Markers of Neuroplasticity In Health and Disease.. Ageing research reviews. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。