その通説って本当?
「昔の人よりも現代人の方が頭が良い」という話を耳にしたことはないでしょうか。心理学の世界では、IQテストの平均点が世代を追うごとに上昇する現象が、長らく注目されてきました。
しかし、この上昇傾向が現在も世界中で続いているのかについては、専門家の間でも意見が分かれています。
通説が広まった背景
IQの平均点が世代とともに上昇する現象は、1980年代にジェームズ・フリンによって広く知られるようになりました12。この現象は「フリン効果」と呼ばれ、20世紀を通じて多くの国でIQテストの点数が右肩上がりに増えていたことが、複数の大規模な分析で示されています12。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Pietschnig & Voracek (2015)1 | 31カ国の約400万人を対象とした過去100年分のデータを複数の研究をまとめた分析 | 20世紀を通じてIQは上昇したが、近年はその勢いが弱まっている | 世界的な上昇傾向は確認できるが、近年は変化の兆しがある |
| Bratsberg & Rogeberg (2018)3 | ノルウェーの男性を対象に、家族内の兄弟間でIQの変化を追跡 | IQの上昇が止まり、その後低下に転じていることを確認 | 環境要因によってIQの傾向が逆転する可能性があることを示す |
| Trahan et al. (2014)2 | 1951年以降の285の研究を複数の研究をまとめた分析 | 10年ごとに平均して約2.3ポイントのIQ上昇が見られた | 過去の一定期間においては、明確な上昇傾向が存在した |
過去100年間のデータを統合した研究では、世界的にIQの平均点が上昇してきたことが示されています1。特に20世紀半ばまでは、多くの国で安定した上昇が見られました2。
一方で、近年の研究ではその傾向に変化が生じています。ノルウェーの調査では、かつての上昇が止まり、その後は低下に転じていることが家族内の比較から明らかになりました3。
これらの変化は、遺伝的な要因よりも、教育環境や生活水準といった周囲の環境の変化が大きく影響していると考えられています34。IQの変化は国や地域、そして時代によって異なる動きを見せており、一概に「現代人は昔よりIQが高い」と断言することはできません13。
研究全体の動向
20世紀を通じてIQの平均点が上昇していたことは、多くのデータで裏付けられています12。しかし、近年では上昇が止まったり、低下したりする国も現れており、世界中で同じ現象が起きているわけではありません13。この変化は、個人の能力そのものの変化というより、教育や社会環境の変化を反映している可能性が高いと考えられます34。
留意点
- 研究の多くは特定の国や男性の徴兵データに基づいているため、世界中のすべての人に当てはまるとは限りません354。
- IQテストの種類や時代によって測定方法が異なるため、単純な比較には注意が必要です62。
- IQの変化は集団全体の傾向であり、個人の知的能力が低下したことを意味するものではありません3。
- 日本国内のデータが十分に反映されているとは限らないため、そのまま日本に当てはめることには慎重さが必要です13。
結論
IQの平均点が世代とともに上昇し続けているという事実は、20世紀のデータでは支持されますが、近年ではその傾向が停滞または低下している国も確認されています132。したがって、IQが世代を超えて一律に上昇し続けているとは言えません13。
引用元
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Pietschnig, J., & Voracek, M. (2015). One Century of Global IQ Gains: A Formal Meta-Analysis of the Flynn Effect (1909-2013).. Perspectives on Psychological Science. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
-
Lisa H Trahan, Karla K Stuebing, Jack M Fletcher, Merrill Hiscock (2014). The Flynn effect: a meta-analysis.. Psychological bulletin. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
Bratsberg, B., & Rogeberg, O. (2018). Flynn effect and its reversal are both environmentally caused. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11
-
Rajaleid, K., & Vågerö, D. (2023). Parental and family determinants of the Flynn effect.. Longitudinal and Life Course Studies: International Journal. ↩ ↩2 ↩3
-
Hegelund, E. R., Teasdale, T. W., Okholm, G. T., et al. (2021). The secular trend of intelligence test scores: The Danish experience for young men born between 1940 and 2000. PLoS One. ↩
-
Mross, P. M., Gorny, I., Krause, K., et al. (2020). Examination of the Flynn effect in German patients with epilepsy assessed with the Wechsler Adult Intelligence Scale (WAIS) III and IV.. Epilepsy & Behavior: E&B. ↩
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