その通説って本当?

「子どもはほめて育てるのが一番」という言葉をよく耳にします。ほめることで子どもが自信を持ち、前向きに努力できるようになると考えられているからです。

しかし、どのような言葉でほめるかによって、子どもの受け止め方やその後の行動は変わるのでしょうか。研究で明らかになっている、ほめることの光と影について分けて考える必要があります。

通説が広まった背景

ほめることは、子どもが自分を大切で有能な存在だと感じるために役立つとされています1。一方で、ほめ方によっては「自分は賢いから成功した」という固定的な考えを強め、失敗を恐れるようになるという指摘もあります2

検証エビデンス

研究対象・方法主な結果この通説への意味
Mueller & Dweck (1998)2小学5年生を対象に、能力をほめるグループと努力をほめるグループに分け、課題後の反応を比較した。能力をほめられた子は、失敗後にやる気が低下し、難しい課題を避ける傾向が見られた。ほめる内容が子どもの挑戦心に影響を与えることを示している。
Morris & Zentall (2014)35〜6歳の子どもを対象に、ほめ方の違い(能力、努力、曖昧な言葉、身振り)が課題への取り組みに与える影響を調べた。能力をほめるよりも、努力をほめる言葉や、曖昧なほめ言葉の方が、失敗後の粘り強さが高まった。具体的な能力への評価よりも、努力や曖昧な肯定の方がやる気を維持しやすい。
Howard (1991)1小児科の視点から、子どもの発達を促すしつけの構造についてまとめた。ラベルを貼らず、具体的な行動を認める言葉が子どもの自尊心を育むと指摘した。ほめることは重要だが、具体的な行動へのフィードバックが大切です。

研究によると、子どもをほめる際には「何をほめるか」が非常に重要です。特に「頭がいい」「才能がある」といった能力を強調するほめ方は、子どもが自分の能力を固定されたものだと感じやすくなります。その結果、失敗したときに「自分には能力がない」と考え、新しい課題への挑戦を避けるようになることが確認されています23

一方で、努力や具体的な行動をほめることは、子どもが失敗しても「次は頑張ればできる」と考え、粘り強く取り組む姿勢を支えることにつながります23。また、言葉だけでなく、身振りや短い肯定的な反応も、子どもが課題を続ける意欲を損なわないために有効な場合があります3

ほめることは、子どもが自分を価値ある存在だと感じるための大切な関わり方の一つです。ただし、ほめることだけで子どもの成長が全て決まるわけではありません。日々の具体的な行動を認め、丁寧に関わることが、子どもの健やかな発達を支える土台となります1

研究全体の動向

ほめるという行為は、子どものやる気や粘り強さに影響を与えますが、その効果は一様ではありません。能力を評価する言葉は逆効果になる可能性がある一方、努力や行動を具体的に伝える言葉は前向きな姿勢を促すことが確認されています23

留意点

  • 研究の多くは特定の年齢層を対象としており、全ての子どもに同じ結果が当てはまるとは限りません。
  • ほめることは子育ての一部であり、家庭環境や親子の関係性など、他の要素も子どもの成長に大きく関わります。
  • この結果は、特定のほめ方を強制するものではなく、言葉がけの工夫のヒントとして捉えてください。
  • 日本の子育て環境や文化的な背景の違いにより、言葉の受け止め方が異なる可能性があります。

結論

子どもをほめることは、やる気を引き出す助けになりますが、ほめ方には注意が必要です。「頭がいい」といった能力をほめるよりも、具体的な努力や行動を認める言葉をかける方が、子どもが失敗を乗り越えて挑戦し続ける姿勢を育むことにつながります23

引用元

  1. B J Howard (1991). Discipline in early childhood.. Pediatric clinics of North America. 2 3

  2. C M Mueller, C S Dweck (1998). Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance.. Journal of personality and social psychology. 2 3 4 5 6

  3. Bradley J Morris, Shannon R Zentall (2014). High fives motivate: the effects of gestural and ambiguous verbal praise on motivation.. Frontiers in psychology. 2 3 4 5 6

※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。