その通説って本当?
「人間が親密に付き合える人数には限界があり、それは約150人である」という話を聞いたことはないでしょうか。これは「ダンバー数」と呼ばれ、脳の大きさや時間の制約から導き出された説として広く知られています。
しかし、現代ではSNSを通じて何千人もの人とつながることが可能です。この数字は本当に私たちの人間関係を制限する壁なのでしょうか。最新の研究データをもとに、この数字が何を意味しているのかを分けて考える必要があります。
通説が広まった背景
ダンバー数は、霊長類の脳の大きさと集団の規模の関係を分析し、人間にも当てはめて予測されたものです12。この説では、人間が安定した関係を保つには脳の処理能力と、相手と過ごすための時間が必要であるとされています13。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Dunbar (2016)1 | イギリスの一般市民を対象に、SNS上のつながりと対面での人間関係の規模を調査しました。 | SNS上のつながりの数も、対面での人間関係の規模と大きく変わらないことが分かりました。 | オンラインでも人間関係の規模には同様の制約が働く可能性を示しています。 |
| Gonçalves et al. (2011)4 | Twitterの約170万人分の会話データを6か月間分析しました。 | ユーザーが安定してやり取りできる人数は100人から200人の範囲に収まりました。 | オンライン環境でも、人間関係の数には一定の限界があることを裏付けています。 |
| Lindenfors et al. (2021)2 | 霊長類の脳の大きさと集団規模の関係を、異なる統計手法を用いて再分析しました。 | 計算方法を変えると、平均的な集団規模は16人から109人と大きく変動しました。 | 特定の数字を導き出すことの難しさを指摘し、この説の根拠に疑問を投げかけています。 |
SNSの普及によって人間関係の制限がなくなるのではないかという期待がありましたが、実際の利用データを調べた研究では、オンラインであっても維持できる関係の数には100人から200人程度の限界があることが確認されています14。これは、私たちが使える時間や注意力が限られているためと考えられています4。
一方で、この数字の根拠そのものを問い直す研究も存在します2。霊長類のデータから人間を予測する計算手法を厳密に検証したところ、統計的な幅が非常に大きく、150人という特定の数字を導き出すことは困難であるという結果が出ています2。
つまり、人間関係に何らかの制約があるという点では多くの研究が一致していますが、それが「150人」という特定の数字で厳密に決まっているのかについては、専門家の間でも意見が分かれています42。
研究全体の動向
人間関係の数には、脳の処理能力や時間の制約による何らかの上限があることは、複数のデータで確認されています14。しかし、その上限が正確に何人であるかについては、計算方法によって結果が大きく異なるため、150人という数字を絶対的な基準として扱うことには限界があります2。
留意点
- この研究は集団の傾向を調べたものであり、個人の性格や生活環境によって維持できる人数は異なります。
- オンライン上の「つながり」の定義は研究によって異なり、親密さの度合いをすべて同じ基準で測っているわけではありません。
- 霊長類のデータに基づく予測は、現代の複雑な社会環境をすべて反映しているとは限りません。
- この数字はあくまで目安であり、人間関係の質や深さを制限するものではありません。
結論
人間関係の数に何らかの制約があることは複数の研究で確認されていますが、それが「150人」という特定の数字に固定されるという明確な証拠はありません42。人間関係の規模は、個人の環境や時間の使い方によって変動するものであり、この数字を厳密な限界値として捉えるべきではありません2。
引用元
-
Robin I. M. Dunbar (2016). Do online social media cut through the constraints that limit the size of offline social networks?. Royal Society Open Science. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
Patrik Lindenfors, Andreas Wartel, Johan Lind (2021). ‘Dunbar’s number’ deconstructed.. Biology letters. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
B. West, G. Massari, G. Culbreth, R. Failla, M. Bologna, Robin I. M. Dunbar, et al. (2020). Relating size and functionality in human social networks through complexity. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. ↩
-
Bruno Gonçalves, Nicola Perra, Alessandro Vespignani (2011). Modeling users’ activity on twitter networks: validation of Dunbar’s number.. PloS one. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。