その通説って本当?

子供がテレビやスマートフォンを長時間見ていると、発達に悪影響があるのではないかと心配する声は少なくありません。多くの親が、画面を見続ける時間が子供の成長を妨げるのではないかと懸念しています。

しかし、画面を見ている時間だけで子供の発達が決まるわけではありません。

通説が広まった背景

デジタル機器の普及に伴い、子供の画面視聴時間は世界的に増加しています。これを受けて、言語発達や注意力、脳の発達への影響を調べる研究が数多く行われてきました123

検証エビデンス

研究対象・方法主な結果この通説への意味
Karaniら (2022)1子供の言語発達と画面視聴時間に関する既存の文献をまとめて分析しました。視聴時間と発達には、良い面と悪い面の両方が関わる複雑な関係があることが分かりました。視聴時間だけで発達への影響を単純に判断することはできません。
Santosら (2022)2子供の画面視聴時間と注意力の関連について、11件の研究をまとめて分析しました。多くの研究で、視聴時間が長いほど注意力の低下が見られましたが、一部では良い結果も報告されました。全体として関連は見られますが、例外的な結果も存在します。
Madiganら (2019)4カナダの約2400組の親子を対象に、2歳から5歳までの視聴時間と発達の経過を追跡しました。視聴時間が長いことが発達の遅れを招くのか、発達に課題がある子が視聴時間を増やしているのか、因果関係は明確ではありませんでした。視聴時間が発達を低下させるという単純な原因とは断定できません。
Paulichら (2021)5アメリカの9〜10歳の子供約1万2000人を対象に、視聴時間と精神面や学業成績の関係を調べました。視聴時間と発達の関連は確認されましたが、家庭の経済状況の方が発達への影響が強いことが分かりました。視聴時間よりも、家庭環境などの他の要因が発達に大きく関わっている可能性があります。
Andersonら (2017)6デジタル機器が子供の認知発達に与える影響について、これまでの研究を整理しました。2歳未満では否定的な影響が目立ちますが、幼児期には教育的な番組が認知能力に良い影響を与えることもあります。年齢や番組の内容によって、発達への影響は大きく異なります。

多くの研究で、画面視聴時間が長いことと、注意力の低下や発達の遅れには関連があることが示されています24。しかし、これが「視聴時間が原因で発達が遅れる」という直接的な証明にはなっていません。発達に課題を感じている子供が、落ち着かせるために画面を見せられている可能性も指摘されています4

また、すべての視聴が悪いわけではありません。2歳を過ぎた子供にとって、教育的な内容の番組は認知能力の発達を助ける可能性があるという報告もあります6。つまり、画面を見ている時間そのものよりも、何を見ているか、あるいは子供の年齢が重要であると考えられます6

さらに、家庭の経済状況や親の教育環境といった要素の方が、視聴時間よりも子供の発達に強く影響しているというデータもあります5。画面視聴は子供の生活の一部ですが、発達を左右する唯一の要因ではないことが分かります。

研究全体の動向

視聴時間と発達の間には何らかの関連があるものの、それが直接的な原因であるとは言い切れません45。年齢や番組の内容、家庭環境といった多様な要因が複雑に絡み合っており、視聴時間だけで子供の発達を評価することはできません16

留意点

  • 研究の多くは特定の国や地域で行われており、日本の子供にそのまま当てはまるとは限りません。
  • 視聴時間と発達の関連は、家庭の経済状況や親の関わり方など、他の要因の影響を強く受けています。
  • 「視聴時間が長い=発達に悪影響」という単純な因果関係は証明されていません。
  • 教育的な番組など、内容によっては発達に良い影響を与える可能性も指摘されています。

結論

視聴時間が長いことと発達の遅れには関連が見られますが、それが直接の原因であるとは断定できません45。年齢や番組の内容、家庭環境によって影響は異なり、視聴時間だけで子供の発達を判断することはできません16

引用元

  1. Nazeera F Karani, J. Sher, M. Mophosho (2022). The influence of screen time on children’s language development: A scoping review. South African Journal of Communication Disorders. 2 3 4

  2. Renata Maria Silva Santos, Camila Guimarães Mendes, Débora Marques Miranda, M. Romano‐Silva (2022). The Association between Screen Time and Attention in Children: A Systematic Review. Developmental Neuropsychology. 2 3

  3. John S. Hutton, J. Dudley, T. Horowitz-Kraus, T. Dewitt, S. Holland (2020). Associations Between Screen-Based Media Use and Brain White Matter Integrity in Preschool-Aged Children.. JAMA pediatrics.

  4. Madigan, S., Browne, D., Racine, N., et al. (2019). Association Between Screen Time and Children’s Performance on a Developmental Screening Test. JAMA Pediatrics. 2 3 4 5

  5. Katie N. Paulich, J. M. Ross, J. Lessem, J. Hewitt (2021). Screen time and early adolescent mental health, academic, and social outcomes in 9- and 10- year old children: Utilizing the Adolescent Brain Cognitive Development ℠ (ABCD) Study. PLoS ONE. 2 3 4

  6. Daniel R Anderson, Kaveri Subrahmanyam (2017). Digital Screen Media and Cognitive Development.. Pediatrics. 2 3 4 5

※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。