その通説って本当?

検索結果を眺めるとき、ニュースを選ぶとき、会議で意見をまとめるとき。私たちは、自分の考えに合う情報ばかりを探しているのでしょうか。

結論は「傾向はあるが、誰もが常にそうするわけではない」です。 心理学でいう確証バイアスは、既存の信念や仮説に沿って証拠を探したり、同じ証拠を自分の立場に有利に解釈したりする偏りの総称です1。ただし、仮説を支持する事例を調べること自体が、直ちに誤りを意味するわけではありません。

通説が広まった背景

出発点としてよく挙げられるのが、Wasonの数列課題です。参加者は、最初に示された数列の規則を推測し、自分で新しい数列を挙げながら正解を探しました。29人のうち、一度も誤答せずに正解へたどり着いたのは6人でした。多くの参加者は自説に合う例を試す一方、自分の仮説が間違っていると分かるような例を十分には試しませんでした2

この印象的な実験から、「人は自分の考えに反する証拠を避ける」という説明が広まりました。しかし後の研究では、仮説が正しいときに当てはまる例を探すことと、自分に都合の悪い証拠を避けることは、別の行動として扱われています。前者は誤りにつながることもありますが、状況によっては効率のよい調べ方になります3。日常では、こうした違いを区別せず、まとめて「確証バイアス」と呼びがちです。

検証エビデンス

研究対象・方法主な結果この通説への意味
Wason(1960)2若年成人29人の数列による仮説検証課題自説に合う例を中心に試し、誤った規則にたどり着く参加者が多かった反証より確認を優先する探し方が起こることを示す
Klayman & Ha(1987)3これまでの仮説検証研究を、考え方と実験結果の両面から再検討仮説に当てはまる事例を調べることは、反対の証拠を避ける偏りと同じではなく、条件によっては効率がよい「仮説に合う事例を調べることは、常に不合理」とは言えない
Nickerson(1998)1幅広い分野の研究を整理情報の探し方、受け取り方、記憶のしかたなど、さまざまな場面で自分の考えに沿う偏りを確認現象は一つの課題に限られない
Hartら(2009)4どの情報を選ぶかを調べた研究をまとめて分析自分の立場に合う情報を選びやすい平均的な傾向(d=0.36)。ただし条件によって強さが変わる傾向はあるが、誰にでも必ず起きるわけではない

複数の研究結果をまとめたHartらの分析では、人は自分の態度・信念・行動に合う情報を、反する情報より平均的に好みました。一方で、反対の情報が現在の目的を達成するのに役立つ場合には、そちらを選ぶこともありました。自分の考えへの確信、その考えと価値観との結びつき、情報の質、自分と異なる考えを受け入れにくい傾向などによっても、偏りの強さは変わります4

研究全体の動向

研究全体から言えるのは、確証バイアスは誰にでも同じ形で現れる性質ではなく、情報の探し方や受け取り方、その人の目的などが重なって生じるということです。仮説に合う事例を調べる方法は、探している事例がまれなときには効率的な場合もあります。問題になるのは、別の説明を考えない、自分の考えが誤りだと分かる情報を避ける、同じ証拠でも自分の立場に合うかどうかで評価を変える、といった場合です31

したがって、知識が豊富なら避けられる、あるいは全員が同じ程度に陥る、という二つの極端な説明はいずれも避けるべきです。

留意点

  • Wasonの課題は小規模な実験であり、日常の検索行動すべてを直接測ったものではありません。
  • 「情報を選ぶ」「証拠を解釈する」「過去を記憶する」は、それぞれ異なる現象です。一つにまとめて、影響の大きさを示すことはできません。
  • 複数の研究をまとめた分析の平均値は、一人ひとりを診断するための数字ではありません。
  • 対策としては「反対意見を一つ読む」だけでなく、何が分かれば自分の考えを誤りと判断するのか、ほかにどのような説明があり得るのかを先に書き出す方が、検討漏れを見つけやすくなります。

結論

自分の考えに合う情報や確かめ方を選びやすい傾向は、古典的な実験と、複数の研究をまとめた分析の両方で確認されています。ただし、起きるかどうか、どの程度強く現れるかは、課題や目的、情報の価値によって変わります。

よって、「確証バイアスは誰にでも常に起きる」は限定的支持です。実務では、人を「バイアスのある人」と分類するより、自分の考えを誤りと判断する条件、ほかに考えられる説明、判断前の予想を記録する方が役立ちます。

引用元

  1. Nickerson, R. S. (1998). Confirmation bias: A ubiquitous phenomenon in many guises. Review of General Psychology, 2(2), 175–220. 2 3

  2. Wason, P. C. (1960). On the Failure to Eliminate Hypotheses in a Conceptual Task. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 12(3), 129–140. 2

  3. Klayman, J., & Ha, Y.-W. (1987). Confirmation, disconfirmation, and information in hypothesis testing. Psychological Review, 94(2), 211–228. 2 3

  4. Hart, W., Albarracín, D., Eagly, A. H., Brechan, I., Lindberg, M. J., & Merrill, L. (2009). Feeling validated versus being correct: A meta-analysis of selective exposure to information. Psychological Bulletin, 135(4), 555–588. 2

※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。