その通説って本当?
多くの国では、臓器提供の意思表示について「希望する人だけが登録する」方式から、「希望しない人以外は自動的に登録される」方式への切り替えが進められています。この変更は、手続きの手間を減らすことでドナー数を増やす狙いがあります。
しかし、制度を変えるだけで本当にドナーは増えるのでしょうか。
通説が広まった背景
臓器不足を解消する手段として、多くの国で「希望しない人以外は登録される」というデフォルト設定への変更が議論されてきました12。この方式は、個人の意思決定の手間を省くことで、登録率を向上させると期待されています34。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Dallackerら (2024)5 | アルゼンチン、チリ、スウェーデン、ウルグアイ、ウェールズの5カ国における制度変更前後のドナー数を分析 | 制度を切り替えても、ドナー数の増加は確認されませんでした | 制度変更単独ではドナー数増加に直結しないことを示唆 |
| Huangら (2018)6 | 中国における登録フォームの形式を変えた実験を実施 | 「希望しない人以外は登録される」形式の方が、登録者数が増加しました | 特定の環境下ではデフォルト設定が有効に働く可能性を示唆 |
| Liら (2013)7 | 実験室で異なる登録方式や優先ルールを比較 | 「希望しない人以外は登録される」方式は、従来の方式より登録率を高めました | 実験環境ではデフォルト設定の効果が確認された |
| Etheredge (2021)2 | 世界各国の臓器提供政策に関する文献を検討 | 制度単独での変更には明確な利点がなく、ドナー数増加にはつながらない可能性を指摘 | 制度以外の要因が重要であることを強調 |
複数の国を対象とした調査では、制度を切り替えてもドナー数が自動的に増えるわけではないことが示されています5。制度変更はあくまで一つの手段に過ぎず、それだけで臓器不足が解決するわけではないという指摘がなされています28。
一方で、実験室や特定の地域で行われた調査では、デフォルト設定が登録者数を増やす効果を持つという結果も出ています67。これらの研究は、登録フォームの形式や提示の仕方が人々の選択に影響を与える可能性を示しています。
このように、研究によって結果が分かれているのは、実際のドナー数には制度以外の要素が複雑に絡んでいるためです。病院の協力体制や医療技術の向上、家族の同意プロセスといった現場の環境が、制度以上にドナー数に影響を与えている可能性があります84。
研究全体の動向
制度を変えるだけでドナー数が劇的に増えるという単純な関係は確認されていません52。一方で、特定の条件下ではデフォルト設定が登録を促す効果を持つことも事実です67。ドナー数を増やすためには、制度の変更だけでなく、医療現場の体制整備や社会的な理解を深める取り組みなど、多角的な方法が必要であるという見方が強まっています28。
留意点
- 研究によって結果が異なるため、一つの制度変更が必ずしも同じ結果をもたらすとは限りません。
- 実験室での結果は、実際の社会環境や個人の複雑な判断をすべて反映しているわけではありません。
- ドナー数は、制度だけでなく、その国の医療体制や文化的な背景にも大きく左右されます。
- この検証は、特定の国や地域での結果をまとめたものであり、日本にそのまま当てはまるとは限りません。
結論
「希望しない人以外は登録される」という制度に変更すれば、必ずドナー数が増えるとは言えません52。特定の環境下では登録を促す効果が確認されていますが67、実際のドナー数には病院の体制や家族の同意など、制度以外の要素が強く影響するためです84。
引用元
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Horvat, L. D., Cuerden, M. S., Kim, S. J., et al. (2010). Informing the debate: rates of kidney transplantation in nations with presumed consent.. Annals of internal medicine. ↩
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Etheredge, H. R. (2021). Assessing Global Organ Donation Policies: Opt-In vs Opt-Out. Risk management and healthcare policy. ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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Wachner, J., Adriaanse, M., van den Hoven, M., et al. (2022). Does default organ donation registration compromise autonomous choice? Public responses to a new donor registration system.. Health policy (Amsterdam, Netherlands). ↩
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Shaw, D. (2019). The side effects of deemed consent: changing defaults in organ donation. Journal of Medical Ethics. ↩ ↩2 ↩3
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Dallacker, M., Appelius, L., Brandmaier, A., et al. (2024). Opt-out defaults do not increase organ donation rates.. Public Health. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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Huang, Y., Song, X., Shao, Y., et al. (2018). Nudging: Default option effect and response mode promote organ donor registry participation in China. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Li, D., Hawley, Z., & Schnier, K. (2013). Increasing organ donation via changes in the default choice or allocation rule.. Journal of health economics. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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Bea, S. (2021). Opt-out policy and the organ shortage problem: Critical insights and practical considerations.. Transplantation reviews (Orlando, Fla.). ↩ ↩2 ↩3 ↩4
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。