その通説って本当?

「第一印象がよい応募者は、能力まで高く見える」「一つの欠点が、すべての評価を下げる」。このように、一つの印象がほかの評価にまで影響する現象は、一般にハロー効果と呼ばれます。否定的な印象が広がる場合は、ホーン効果とも呼ばれます。

全体的な印象が個々の評価に影響する現象は、実験と、複数の研究をまとめた分析の両方で確認されています。 ただし、研究から分かるのは、多くの人の評価をまとめたときに見られる傾向です。ある人の採否が、ハロー効果だけで決まったと断定することはできません。

通説が広まった背景

Thorndikeは1920年、軍の上官が部下の知性、体格、指導力、人格などを評価したデータを調べました。本来は別々に評価される特性なのに、点数が不自然なほど似通っていたことから、人物全体の印象が個々の項目の評価にまで影響する可能性を指摘しました1

この研究では、複数の項目の点数がどれほど似ているかを調べただけなので、人物全体の印象が原因だったとまでは言えません。そこで後の実験では、同じ人物の振る舞いだけを変え、外見や話し方などの評価まで変わるかを調べました。

検証エビデンス

研究対象・方法主な結果この通説への意味
Thorndike(1920)1軍人・航空候補生に対する上官の評価本来は別々に見るべき特性の点数が似通っていた評価者が項目を分けて判断できていない可能性
Nisbett & Wilson(1977)2学生118人、同じ講師の「温かい/冷たい」映像外見、しぐさ、アクセントの評価まで変化全体的な印象が個々の評価を変えることを示す
Eaglyら(1991)3外見の魅力から性格や能力を推測する傾向を調べた研究をまとめて分析魅力的な人物には、好ましい性格や能力もあると推測しやすかった外見の印象が性格や能力の評価にまで広がることを裏づける
Hosodaら(2003)4外見の魅力が採用や仕事の評価に及ぼす影響を調べた実験をまとめて分析研究の規模を考慮した平均はd=0.37。実務家も学生と同程度に影響を受けた採用や仕事の評価にも無視できない影響がある

NisbettとWilsonの実験では、同じ講師が温かく友好的に振る舞う映像を見た群は、冷たく距離を置く映像を見た群より、外見、しぐさ、アクセントまで好意的に評価しました。参加者は、講師への全体的な印象が個々の評価を変えたことに、正確には気づいていませんでした2

採用に近い場面を扱った証拠として、Hosodaらは、外見の魅力が採用や仕事の評価にどう影響するかを調べた実験をまとめました。魅力的な人は平均して有利に評価され、影響の大きさを表すdは0.37でした。応募者の仕事に関する情報を多く示した研究でも偏りは消えず、実務家も学生と同程度に影響を受けました。一方で、新しい年代の研究ほど影響が小さい傾向も報告されています4

研究全体の動向

「ハロー効果」という言葉は、全体的な印象、外見、肩書、実績など、さまざまな手がかりの影響を広く指して使われます。研究を読むときは、何を変えて比べ、何を評価したのかを分けて考える必要があります。

同じ人物の振る舞いだけを変えて比べた実験では、その人の外見や話し方の評価まで変わりました。また、外見に関する複数の研究をまとめた分析では、採用や仕事の評価で平均的な有利・不利が生じることが示されています。ただし、すべての面接方法、職種、文化で同じ程度の影響が出るとは限りません。

留意点

  • 外見の魅力による偏りはハロー効果の一例であり、両者は完全な同義語ではありません。
  • 評価項目の点数が似ているだけでは、能力同士が実際に関係している可能性を排除できません。原因を確かめるには、一つの条件だけを変えて比べる実験が必要です。
  • d=0.37は複数の研究をまとめた平均値で、個々の採否が変わる確率そのものではありません。
  • 全員に同じ質問をし、評価基準をあらかじめ決めておく面接、行動に基づく評価項目、評価者ごとの独立採点、採点後の話し合いは、第一印象の影響を受けにくくする実務的な方法です。

結論

ハロー効果の存在と、外見の魅力が採用や仕事の評価に及ぼす平均的な影響は、複数の研究方法で確認されています。したがって「採用や評価に影響する」という通説は支持できます。

ただし、「第一印象が採否を必ず決める」とまでは言えません。評価者が気をつけるだけでなく、項目ごとに観察事実を記録し、独立して採点する設計が重要です。

引用元

  1. Thorndike, E. L. (1920). A constant error in psychological ratings. Journal of Applied Psychology, 4(1), 25–29. 2

  2. Nisbett, R. E., & Wilson, T. D. (1977). The halo effect: Evidence for unconscious alteration of judgments. Journal of Personality and Social Psychology, 35(4), 250–256. 2

  3. Eagly, A. H., Ashmore, R. D., Makhijani, M. G., & Longo, L. C. (1991). What is beautiful is good, but…: A meta-analytic review of research on the physical attractiveness stereotype. Psychological Bulletin, 110(1), 109–128.

  4. Hosoda, M., Stone-Romero, E. F., & Coats, G. (2003). The effects of physical attractiveness on job-related outcomes: A meta-analysis of experimental studies. Personnel Psychology, 56(2), 431–462. 2

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