その通説って本当?
MBTIは、四つの軸を組み合わせ、ESTJやINFPなど、16タイプのいずれかとして結果を示します。分かりやすさから、自己理解、研修、チームづくりで広く使われています。
しかし、ここで検証する主張は「会話のきっかけとして役立つか」ではなく、人の性格が、科学的に区別できる16の固定タイプに分かれるかです。この主張は、主要な研究では支持されていません。
通説が広まった背景
MBTIは、Jungが提唱した性格分類をもとに、Katharine Cook BriggsとIsabel Briggs Myersが発展させた、本人が質問に答える形式の性格検査です。外向―内向、感覚―直観、思考―感情、判断―知覚という対になった表示は覚えやすく、結果について人と話しやすいという利点があります。
ただし、表示が二択でも、測定された得点が自然に二つの集団へ分かれるとは限りません。たとえば外向性が連続的に分布しているなら、境界の両側にいる二人はよく似ていても、別々の文字に分類されます。この「得点」と「タイプ」の区別が検証の中心です。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| McCrae & Costa(1989)1 | 成人468人。本人と周囲の人が回答した別の性格検査の結果と比較 | 性格の傾向は二つの型にはっきり分かれず、四つの軸それぞれに幅があると考える方が結果に合っていた | 16タイプという分け方を裏づけない |
| Capraro & Capraro(2002)2 | 複数の研究をまとめ、質問への答え方と、受け直したときの点数がどの程度似るかを調べた | 同じ特徴をたずねる複数の質問には、似た方向の答えをする人が多く、受け直したときの点数も前回と比較的近かった。ただし、研究によって差がある | 四つの軸の点数は、受け直しても大きくは変わりにくい |
| Salterら(1997)3 | 同じ人が約20か月後にもう一度受けた結果を比較 | 四つの軸の点数は、前回とある程度似ていた(点数の似方を表す相関は0.69〜0.77) | 点数が似ていても、4文字が同じとは限らない |
| Edwardsら(2002)4 | 情報をどう受け止めるかを測る課題で、ほかの性格テストと比較 | MBTIの一部の軸を加えると、ほかの性格テストだけの場合より予測がよくなった | MBTIから得られる情報がすべて無意味とは言えない |
最も重要なのは、四つの軸の点数が受け直しても似ることと、人を16タイプに分けられることは別だという点です。MBTIでは、まず四つの軸ごとに点数を出し、それぞれの点数が境目のどちら側にあるかで文字を決めます。
複数の研究をまとめたCapraroらの分析では、同じ特徴をたずねる質問に、似た方向の答えをする人が多く見られました。また、期間を空けて受け直した研究では、四つの軸の点数が前回とある程度似ていました23。しかし、境目に近い人は、わずかな点数の変化で文字が変わります。そのため、四つの軸の点数が前回と似ていても、4文字のタイプまで毎回同じになるとは限りません。さらに、点数が安定していることだけでは、人の性格が16の異なるタイプに分かれる証拠にはなりません。McCraeとCostaは、MBTIの四つの軸が、性格を五つの傾向で捉える「五因子モデル」の一部と重なる一方、人の性格を二つにはっきり分けられるとは言えないと報告しました1。
研究全体の動向
研究からは「MBTIは全部でたらめ」という単純な結論も導けません。質問への答えから、外向的か内向的か、情報をどのように受け取りやすいかといった傾向の強さを、ある程度捉えている可能性があります。一部の課題では、MBTIの点数を加えると、ほかの性格テストだけを使った場合より予測がよくなったという結果も報告されています4。
一方、ここで紹介した、受け直したときの点数を比べる研究だけでは、16タイプの説明文から仕事の成果、相性、適職を十分な精度で予測できるとは言えません。用途ごとに、何を予測したいのか、ほかの方法より正確なのか、別の研究でも同じ結果になるのかを確かめる必要があります。
留意点
- MBTIは医療上の「診断」ではありません。本記事では、性格の傾向を見るための検査として扱います。
- 受け直したときの点数が前回に近くても、境目をまたげば4文字のタイプは変わることがあります。
- 自己理解に役立ったという個人的な経験は尊重できますが、それは16タイプという分け方が科学的に正しいかどうかとは別の話です。
- 採用、昇進、配置のように本人への影響が大きい判断で使うなら、仕事の成果をどの程度予測できるのか、不利になる人はいないか、ほかの方法より適切かを確かめる必要があります。
- 無料の「MBTI風」テストは、公式MBTIとは質問や採点方法が異なります。公式MBTIを使った研究結果を、そのまま当てはめることはできません。
結論
MBTIは、受け直しても四つの軸の点数がある程度似ることがあり、性格について何らかの情報を含む可能性があります。しかし、「人の性格は、はっきり異なる16の固定タイプに分かれる」という通説は支持されていません。
したがって判定は否定的です。利用するなら、4文字を人の本質や適職を断定する材料にせず、対話のきっかけとなる一つの見方として扱うのが、研究結果に合った使い方です。
引用元
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McCrae, R. R., & Costa, P. T. Jr. (1989). Reinterpreting the Myers-Briggs Type Indicator from the perspective of the five-factor model of personality. Journal of Personality, 57(1), 17–40. ↩ ↩2
-
Capraro, R. M., & Capraro, M. M. (2002). Myers-Briggs Type Indicator score reliability across studies: A meta-analytic reliability generalization study. Educational and Psychological Measurement, 62(4), 590–602. ↩ ↩2
-
Salter, D. W., Evans, N. J., & Forney, D. S. (1997). Test-retest of the Myers-Briggs Type Indicator: An examination of dominant functioning. Educational and Psychological Measurement, 57(4), 590–602. ↩ ↩2
-
Edwards, J. A., Lanning, K., & Hooker, K. (2002). The MBTI and social information processing: An incremental validity study. Journal of Personality Assessment, 78(3), 432–450. ↩ ↩2
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。