その通説って本当?
「子どもが生まれると夫婦の時間が減り、関係が冷え込む」という話を耳にしたことがあるかもしれません。
実際に、親になることは生活環境や役割に大きな変化をもたらすため、夫婦の関係性に影響を与えることは想像に難くありません。
通説が広まった背景
出産後の夫婦関係の変化については、古くから多くの研究が行われてきました。特に、睡眠不足や役割の変化がストレスとなり、夫婦の満足度が低下するという報告が積み重ねられています1。一方で、近年では育児に対する社会的な期待や夫婦の協力体制の変化が、この傾向にどう関わっているのかという視点も重要視されています2。
検証エビデンス
| 研究 | 対象・方法 | 主な結果 | この通説への意味 |
|---|---|---|---|
| Bogdanら (2022)3 | 49件の研究をまとめて分析 | 妊娠中から出産後1年までの間に、夫婦の満足度が中程度低下することが確認されました。 | 出産後の満足度低下は多くの研究で共通して見られる傾向です。 |
| Lawrenceら (2008)4 | 子どもがいない夫婦と比較 | 子どもが生まれた夫婦は、そうでない夫婦に比べて満足度の低下が大きく見られました。 | 出産という出来事が満足度の変化に影響している可能性を示しています。 |
| Mackら (2023)5 | 606人の父親を対象に追跡調査 | 初めて父親になった人は、2人目以降の父親に比べて満足度の低下が急激でした。 | 親になる経験の有無や回数が満足度の変化に関係している可能性があります。 |
| Lessardら (2025)6 | 196組の初産夫婦の日記調査 | 日々の衝突が多いほど満足度は下がりますが、親の性格や親密さによって影響の受け方が異なりました。 | 夫婦の個別の特性が満足度の変化を左右することを示しています。 |
多くの研究が、出産後に夫婦の満足度が低下する傾向を報告しています。特に、妊娠中から出産後1年という期間は、生活の変化が大きく、満足度が下がりやすい時期であることが複数の研究で示されています34。
しかし、この低下は一律ではありません。初めて親になる人は、2人目以降の親に比べて満足度の変化が急激であるという報告もあります5。これは、親としての役割に慣れていないことによる戸惑いや、生活リズムの激変が影響していると考えられます。
また、日々の夫婦間の衝突が満足度を下げる要因であることは確かですが、その影響の受け方は夫婦の性格や親密さによって異なります6。つまり、同じ状況でも、夫婦がどのようにコミュニケーションを取り、衝突に対処するかによって結果が変わるということです。
さらに、近年では社会的な規範の変化も注目されています。家事や育児の分担がより平等になるなど、夫婦の協力体制が変化することで、親としての幸福感のあり方も変わりつつあるという指摘もあります2。
研究全体の動向
出産後に夫婦の満足度が平均的に低下することは、多くの研究で確認されています341。しかし、その低下の度合いは夫婦によって大きく異なり、個人の性格や夫婦の協力体制、育児に対する考え方などが複雑に関わっています56。そのため、「子どもができると必ず幸福度が下がる」と断定することはできません。
留意点
- 研究の多くは特定の国や地域で行われており、日本の文化や社会背景がそのまま当てはまるとは限りません。
- 満足度の低下は「平均的な傾向」であり、すべての夫婦が同じように幸福度を下げるわけではありません。
- 調査対象が初産夫婦に偏っている場合があり、2人目以降の出産や多様な家族形態についてはまだ十分に分かっていません。
- この結果は夫婦関係の平均的な変化を示したものであり、個別の夫婦の将来を予測したり、診断したりするものではありません。
結論
出産後に夫婦の満足度が平均的に低下する傾向は多くの研究で確認されています34。しかし、その変化は夫婦の個別の特性や協力体制に大きく左右されるため、すべての夫婦に当てはまるわけではありません56。
引用元
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Medina, A. M., Lederhos, C. L., & Lillis, T. A. (2009). Sleep disruption and decline in marital satisfaction across the transition to parenthood.. Sleep disruption and decline in marital satisfaction across the transition to parenthood.. ↩ ↩2
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Preisner, K., Neuberger, F., & Bertogg, A. (2019). Closing the Happiness Gap: The Decline of Gendered Parenthood Norms and the Increase in Parental Life Satisfaction. Closing the Happiness Gap: The Decline of Gendered Parenthood Norms and the Increase in Parental Life Satisfaction.. ↩ ↩2
-
Bogdan, I., Turliuc, M. N., & Candel, O. S. (2022). Transition to Parenthood and Marital Satisfaction: A Meta-Analysis. Transition to Parenthood and Marital Satisfaction: A Meta-Analysis.. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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Lawrence, E., Rothman, A. D., & Cobb, R. J. (2008). Marital satisfaction across the transition to parenthood.. Marital satisfaction across the transition to parenthood.. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
J. T. Mack, Lena Brunke, A. Staudt, M. Kopp, V. Weise, S. Garthus-Niegel (2023). Changes in relationship satisfaction in the transition to parenthood among fathers. PLoS ONE. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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Isabelle Lessard, Audrey Brassard, Noémie Beaulieu, Patrick Gosselin, Anne Brault-Labbé, Marie-France Lafontaine, et al. (2025). Daily Conflict and Relationship Satisfaction in Couples of New Parents: The Moderating Roles of Romantic Attachment and Intimacy.. Journal of marital and family therapy. ↩ ↩2 ↩3 ↩4
※ 引用元が実在することに加え、記事の主な記述が引用元の内容と一致しているかも確認しています。ただし、DOIが正しいだけで、研究内容や記事の解釈まで正しいと保証されるわけではありません。